——この作品に出演しようと思ったきっかけは?
竹野内豊:意図的に、映画を避けていたわけではないんです。自分自身も、こんなに長く映画に出てないのかと正直驚いているぐらいです。この脚本を読んだとき、自分の子供の頃を思い出しました。自分は田舎育ちなので、仲間と一緒に野原を駆け回ったり、山を探検したり、毎日が冒険でした。まるで映画の「スタンド・バイ・ミー」のような世界だった。
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——竹野内さんの父親役は意外な気もします。
竹野内豊:自分自身、父親という経験がないので、親の気持ちをどう表現しようかいろいろと考えました。しかも、「最愛の娘を失う父親」という計り知れない悲しみを背負っている役どころで、正直不安でした。でも、現場に行くと絵里奈役の里琴ちゃんがいきなり「おとうさん」って呼んできて(笑)。「抱っこして! 抱っこして!」って、もう可愛くて。里琴ちゃんは、とても天真爛漫で彼女がいるだけで撮影現場が明るくなる。この映画の絵里奈そのものだったんです。だから、自分自身の役作りの上でも努めて里琴ちゃんとのコミュニケーションを大切にしようとしました。そして、里琴ちゃんが収録を終えて、現場からいなくなったとたんに、現場全体にも自分の心にもぽっかり穴があいたような雰囲気になったんです。あとは、実際に子供を亡くされた方々の手記を拝見させて頂きました。
——今回の映画で竹野内さんが演じた父親役は、少し残酷でもあり、人間の弱さを象徴してるような印象を受けましたが。
竹野内豊:最初は、自分が演じる父親・雅仁に批判的でさえいました。娘を失ったからといって、「ここまで壊れていいのか」「もう少し周りをみれないのか」と。でも、改めて考えてみると、最愛の子供を失った親の悲しみは、もっともっと深くて辛いもので、頭では子供の死を理解していても、納得がいかない・・・もう、その存在は永遠に戻ってこないし、抱き上げることもできない・・・。もちろん、残された英治の父親でもあるけれど、悲しみを抑えることのできない「人間」でもある。僕の演じる雅仁の苦しみをどう観ている人に共感してもらえるか監督といろいろ話し合いました。
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